原住民産業について
2019.07.05

音楽界のボクサー BOXING

BOXINGはラテン・ロック・ヒップポップ・フュージョンをメインとした、台湾初の原住民族ラテンラップグループです。メンバーは海洋ロックフェスティバルで知り合った屏東パイワン族の3組の兄弟、合計6人で、全員がかつてボクサーだったというバックグラウンドを持っているため、BOXINGというグループ名になりました。

2014年にパイワン語アルバム『野生BOXING』と中国語アルバム『BOXING』を同時リリースし、アルバム『野生BOXING』が第26回金曲賞の最優秀新人賞・最優秀バンド賞・最優秀原住民語歌手賞および最優秀原住民語アルバム賞にノミネートされ、最終的に最優秀新人賞を受賞するという高い評価を得ました。

縁あってアーメイ(張恵妹)と出会い、バンドのスタイルと曲風が変化し始める

もともと「SE楽団」と名乗っていたBOXINGは2010年に正式にグループを結成し、様々な大規模ロックフェスティバルに出演するようになりました。あるとき縁があって原住民族テレビ局の音楽番組で女王と呼ばれる張恵妹さん(アーメイ)と出会い、アーメイはBOXINGに様々な情報を提供したり、バンドのスタイルや曲風の変更の手助けをしたり、プロデューサーやミュージシャンをBOXINGに紹介したりしてくれました。

ワイルドなBOXINGと都会的なBOXING、母語だと生活をよりリアルに表現できる

BOXINGは2枚のアルバムをリリースしました。1枚はワイルドなBOXING、もう1枚は都会的なBOXINGです。最初に母語であるパイワン語で作曲しようと思ったのは、彼らが普段母語を使って話しているため、母語の歌が自然と湧いて出てきたからだと言います。初めは、母語の歌を聴いてもみんな意味が分からないのではないかと心配しましたが、彼らは音楽のリズムで人々を引き付けることができると信じました。また、原住民族の言語を学んでいるのは原住民族だけに限らず、こうした言語に触れたことがあり少し学んだことのある平地の子どもたちもたくさんいることに気付きました。BOXINGは「両親の言語を学ぶことによって家族との絆もより深くなる」と言います。

『猟人与殺手(Hunter Killer)』誕生の由来

狩人はパイワン族社会の中で非常に地位が高く、むやみやたらに狩ることはしません。狩人は部族の皆に狩猟方法の指導もします。平地の人から見ると、狩人は自然会のバランスを崩す悪人と思われがちですが、実は狩人だけが、自然とうまく共存し自然界のバランスを保つことができるのです。ですから彼らはこの歌を通じて「一つのことの真の自然な姿」を伝えようとしているのです。

原住民の村を想いながら都会で懸命に生きる心情を歌う『回家的路』

家は私たちの力の源です。挫折したときや辛いとき、私たちは家があることによって励まされます。会社は私たちの家、音楽も私たちの家なのです。

この曲の最も特別な点は、BOXINGが録音のために村に戻り、村の子どもたちと一緒に曲中の一部分、「お年寄りが子どもの帰りを見て、やっと帰ってきたかと言う」という意味のフレーズを母語で合唱していることです。実家に帰る途中でこの曲を聴くと、いつも深い感慨を覚えます。帰りたいけど帰れない。まだなにも成し遂げていないから帰れない。でも家族が心配するといけないから、本当に時々家に帰る。すると毎回家に帰るたびにお爺さんやお婆さんが喜びのあまり涙する。ちゃんと寝ているだろうか、暖かい恰好をしているだろうかと、いつも私たちを気にかけてくれているのです。この歌は、故郷から離れて一生懸命頑張っている友人たちに、時間があればできるだけ家族に電話をかけようと勧めています。私たちは明日何が起こるかさえも分からないのだから、1日1日を大切にしなければならないのです。

少しの理想に少しの文化をプラス チャンスは準備ができている人の所にやってくる

「音楽の道をひたすら歩き、絶えず曲を創作し続ける」。BOXINGは自分たちの曲が遠くに届けられ、世界とコミュニケーションできることをずっと願っています。

どんな言語かに関わらずただひたすら創作し続けてより多くの音楽の形を提供し、音楽を通じてたくさんの友達を作る。これが彼らのグループ結成当初からの願いです。自分や他のアーティストたちに、互いに知り合うことのできる機会を提供します。1人1人の好みは異なるので、誰が良いとか悪いとかいうことはありません。ただ、自分は何者なのかをしっかりと認識してから創作をスタートさせる必要があります。

「私たちは自分たちの作品がどこまで成長するかということを考えないようにしています。これは落ち着いて一歩一歩進んでいくべきことで、ひと蹴りしたらすぐにゴールできるというものではないからです」。BOXINGは、原住民族の言葉を用いて作曲すること、自分の理想に少しの文化をプラスして、どんな大きさの舞台でも構わずどんどんチャレンジしていくことを勧めています。なぜなら、チャンスは準備ができている人の所にやってくるからです。