原住民産業について
2019.07.12

頭上の花輪はやっぱり僕らのトレードマーク、Paliulius8664楽団の林源祥さん

Paliulius 8664とは林源祥さんを中心に結成された音楽クループです。初めはシンプルな歌声から始まり、そこに少しずつ楽器が加わって楽曲となり、その音楽をさらにパフォーマンスアートへと変化させ、音を用いて人々にメッセージを伝える。これが8664の音楽に対するスタイルです。

音楽は生活の中から始まる、林源祥は音楽を用いて花の意味を語る

林源祥さんは初めから原住民集落で育ったのではなく、小学校4年生の時に両親の仕事の関係で台東の実家に戻り、親戚たちと一緒にに暮らすようになりました。そしてこの時に初めて、村の中で歌われている歌が以前教会に行ったときに耳にした讃美歌や教会の合唱団の歌とは全く異なることに気付き、村に戻って初めて伝統的な音楽や歌の新しい世界との本当の出会いを体験しました。

原住民族の言葉をきちんと学ぶようになったのは、林源祥さんが東華大学に通っていた頃で、彼はその時初めて音楽と言語の大切さに気付きました。バンドの結成から今に至るまで、その楽曲のほとんどは彼の創作によるものです。バンドメンバーと彼はとても気が合い、お互いに相手の伝えたいことをすぐに理解することができます。「僕らの音楽は全て生活の中から始まる。何かを目にすると、それを歌にしたくなるんだ。」

2016年から、林源祥さんは新しいメンバーたちとバンドの方向性について話し合い始めました。日々の生活以外に、何かごくシンプルな要素を創作のテーマに据えたいと思ったのです。そんなある日、台東へ行った彼らは原住民集落のお年寄りが花輪を編んでいる姿を目にしました。花輪は原住民族の文化の中で、ある限られた職業に従事する者しかかぶることのできない物、または階級を表す象徴です。それ以来彼らは花や植物に関する楽曲を続々と生み出し、音楽を用いて花の物語を人々に聞かせるようになりました。

しっかりと「基礎」を固め観察力を用いて歌を作り、村の青年たちが新しい花を咲かせることを願う

原住民族ミュージシャンの人材輩出に関して、林源祥さんは現在の若者に次のようにアドバイスしています。「音楽をやるのに一番大切なのは基礎を固めること。『音楽』とは何かをスピーディーに理解しなければならない。歌いたいものを歌うのではない。音楽にはよく知って学ばなければならない側面や奥深さがある。どうしたら音楽の背後にある物語を伝えることができるかをよく知ったうえで、観察力をフルに活用して創作し、思い切りパフォーマンスし、いわゆる音楽の感動を味わって、それを一人一人に伝えるんだ」。この感動をもとに才能を発揮しながらチャレンジし、疲れもストレスも知らない若者の熱い情熱で、思いきり音楽を楽しんでいます。

Paliulius 8664は金曲賞を受賞した後、パフォーマンスとトレーニングを調整し、パフォーマンスには豊かさと深みを加えました。しかし本質に立ち返ることを忘れず、新米ミュージシャンたちに音楽や理念を教え、感動的な楽曲を耳にした若い世代の人々がバトンを引き継いで自分の力で美しい花を咲かせていくことができるようサポートしています。

人生における悲喜こもごもから知識を得、音楽を通じて大切な財産を伝える

Paliulius 8664のメンバーは全員原住民族で、ある一つのことを学ぶために田園調査の仕事を開始し、数多くの原住民集落を訪問して回りました。その過程では信頼されなかったり、見慣れない人間だからと言って拒絶されたりすることもありましたが、そうした中で経験した人生の喜びや悲しみ、別れや出会いといった悲喜こもごもが全てメンバーたちの糧となり、掛け替えのないものとなって、一つ一つの経験を通じて学んだ言葉や感じたこと全てが彼ら自身の財産となっています。そして音楽を用いてそれらをしっかりと整理し、原住民集落に還元して、村の次世代の若者たちに伝え、こうした考えや物の見方を記録に残していくのです。