原住民産業について
2021.02.10

NA SUN NA GU-私の家へようこそ

NA SUN NA GU-私の家へようこそ

NA SUN NA GU(那山那谷)の創設者である陳宥儒さんは、キャンプ場がちょうど山間の谷の中にあることから、タイヤル族の「私の家(ngasal maku‘)」という言葉と似た発音の「NA SUN NA GU(那山那谷)」という名前を付けて、「ようこそ我が家へ!皆でリラックスしてここの生活を楽しもう」というメッセージを込めたのだと私たちに話してくれました。

 

先祖代々の土地の生命を引き継ぎ、新たな価値を創造する

陳さんの家では宜蘭県南澳郷金洋村に約3ヘクタール近い土地を所有していますが、この土地は先祖から受け継がれてきたものです。以前はこの土地で主にショウガや落花生や果物の栽培が行われていましたが、農作物の栽培はあまりうまくいかなかったため、その後暫くの間放置され、荒れ地となっていました。父親が小学校の校長を退職した後、陳さんはこの土地を再び生き返らせて新しい価値を付与したいと考え、父親と共に計画を立て始めました。そして何度も話し合いを繰り返した結果、ついにこの土地を整備しなおして現在のキャンプ場を作ることに決定したのです。

 

反対意見にもめげず、そうした観念を一つ一つ覆していった

陳さんのお父さんが一番初めに思い付いたのは、単純に何軒かの家を建てて民宿を経営することでした。そうすれば遠方で働いている子どもたちももっと頻繁に故郷に帰ってくることができると考えたのです。しかし、親子でよく話し合った結果、ぜひともキャンプ場を作ろう、という考えに至りました。ところが土地の整備を始めた頃から、隣人たちの様々な疑念の声が上がり始めました。彼らは「その土地をキャンプ場にしても益にならない。こんなに大きな土地をキャンプ場にしてしまうなんてもったいない。どうしてそんなことをするのだろうか」と不思議に思ったのです。しかし陳さんとお父さんはそうした声を一切気にせず、地道にキャンプ場の経営を進めていきました。そして徐々に知名度が上がり高い評価を得るようになると、かつて疑問の声を投げかけていた人々も驚いて何も言えなくなり、しまいには次々と新しいキャンプ場を作り始めました。NA SUN NA GUの成長の過程は決して平坦なものではありませんでしたが、キャンプ場を経営しようと決めた時の初心を貫き、人々との信頼関係を築きながら、NA SUN NA GUというブランドの知名度も獲得していったのです。

 

恵まれた地理的条件を生かし、幼い頃のタイヤル族風の自然に親しむ遊びを皆に体験してもらう

NA SUN NA GUのキャンプ場は南澳南渓のすぐそばにあるため、沢登りや「漂流」などの体験イベントを設けており、「漂流」はNA SUN NA GUならではのアクティビティとなっています。「漂流」はもともとタイヤル族の人々が小さな頃から川辺で遊んでいる遊びの一つです。そこで陳さんは、自分が幼い頃に遊んでいた遊びを商品化し、都会の人たちにここでタイヤル族の子どもが育つ環境や大自然に親しむ遊び方などを体験してもらうことはできないだろうかと考え、安全面も考慮したうえで様々な工夫を凝らし、現在のような安心して楽しめる「漂流体験」へと発展させました。このアクティビティを体験した多くの旅行客が、友人を連れてもう一度NA SUN NA GUを訪れています。陳さんは、「お客様方の支持と信頼を得ることができて本当に嬉しく、感謝している。NA SUN NA GUがお客様にとってただのキャンプ場ではなく、第二の家となってくれることを願う。暇があればぜひいつでも気軽にこの家に帰って来て、あちこち散歩しながらのんびりと過ごしてほしい」と語ります。

 

多元的な発展とNA SUN NA GUブランドの確立

キャンプ産業は近年高い人気を博していますが、ここ1~2年は下り坂傾向を見せており、NA SUN NA GUもその例に漏れず経営が伸び悩みました。そこでNA SUN NA GUの経営方針においてキャンプ場ということにこだわるのをやめ、ブランドという角度から改めてプランを立て直し、自分たちのビールや炭酸飲料およびキャンプ用テントなどの生産を開始しました。今後も様々なことにチャレンジしながらより多くの新たな価値を創出し、NA SUN NA GUの持続可能な経営を目指していきたいと願っています。

NA SUN NA GUへ来たらここでテントを張ってキャンプをしたり、沢登りや漂流を楽しんだり、夜親しい友人たちとキャンプファイヤーを囲みながらビールや炭酸飲料を飲んでおしゃべりや挨拶をしたりすることができます。NA SUN NA GUはまるで山林の中の遊園地のような場所。せっかく来たからには心身ともに徹底的にストレスから解放され、自宅に帰ったかのようにゆったりと自然体で過ごしましょう。