原住民産業について
2021.12.10

河文原住民族生活工場(Hbun)

河文原住民族生活工場

製造から販売チャネルへ、実店舗からオンラインショップへ。これが河文原住民族生活工場の創設者、劉大衛さんのブランド経営の道のりです。

「Hbun」は台湾のタイヤル族の言葉で川の合流地点を意味し、文化が育まれる場所という意味も含んでいます。「Hbun河文原住民族生活工場」は、自分が原住民集落の出身であるというスタンスに立ち、しっかりとした品質のピュアで素敵な生活用品をクリエイトし、それらをより多くの人と分かち合いたいとの願いをもって、3年余り前に淡水の川辺にオープンしました。

「当初は自分が立ち上げたブラント『拿鞘』に販売プラットフォームがなく、他の販売チャネルを利用した場合マージンがとても高かったこと、そして多くの原住民族業者も同じ問題に直面していたことから、とにかくこの店をオープンさせようと思ったのです」劉さんは笑いながら、その頃はとても衝動的で、店舗になる物件をまだ見てもいないのに大家さんと契約をしてしまったと話します。「その時私は、自分は年をとればとるほど思い切りが悪くなるだろうから、もし今やらなかったら、これから先もやる勇気が出ないだろうと思ったのです」

こうした既存の枠から抜け出したいという意気込みが、彼を起業へと邁進させ続ける原動力となっています。例えば何年も前にカルチャークリエイティブブランドの「拿鞘」を立ち上げた際は、ビンロウの木から毎年大量に落下する葉鞘を見て、廃棄される落ち葉を人の役に立つ日用品に変えたいと考えるようになりました。そして現在は、2つのブランドを同時に運営するという経験から、たびたび「商品の製作側」と「販売プラットフォーム側」の両方の立場に立って様々なことを考え、運営に関する多くのアイディアを生み出しています。

「以前は販売代行のマージンが高すぎるといつも思っていましたが、自分でやってみて初めてその大変さに気が付きました」「販売プラットフォーム側」の立場から言えば、販売する際には店舗の家賃や倉庫・人件費などといった出費があるほか、マーケティングに多くの時間や資本を費やして初めてブランドイメージを確立することができ、顧客を店に引き付けることができるのです。こうしたことは、以前は全く考えもしませんでした。

 同様に、「商品製造側」の立場に立って考えた場合、劉さん自身が以前と最も大きく変わったと思う点は、販売店に利益を譲ることを学び、慎重に販売チャネルを選ぶことの重要性をより深く理解したことです。各販売代行プラットフォームともそれぞれに特定の顧客層を抱えているので、自分にマッチしたチャネルで販売すればより多くの機会を得ることができます。例えば「拿鞘」の大稲埕にある販売チャネル「土衣荒物」には台湾本土の文化を前面に押し出したブランドが数多く集められているため、たくさんの機会を作り出すことができます。また、昨年「双口呂文化廚房」と実施した業界をまたいでのコラボでは、「紅亀ケーキ」と「ビンロウの葉」を融合させ、「閩南人」と「原住民」という民族間の壁を越えて既成の枠を打ち破り、より多くの人々に台湾原住民族の工芸の美しさを伝えました。

 

 

製造と販売両方の運営

「原住民族のためのPinkoiのような、原住民集落の皆で共有する販売プラットフォームになりたい!」

劉大衛さんは、少し前コロナの関係で実店舗の経営がとても苦しかったので早めに補助を申請し、原住民族委員会の産業創新価値プロジェクトのおかげで自分の独立したECプラットフォームを始めることができたことにとても感謝していると語りました。「ECプラットフォームを運営するということ自体は取り立てて新しい試みとも言えないかもしれませんが、私は原住民族の業者だけが利用するECプラットフォームを作りたいと思っています。原住民族専用のPinkoiのようなものですね」

「初めは少し大きめの夢を描いていて、Pinkoiのように、各工房に開放して自分たちで商品を棚に並べることができるようにしたいと思っていました」しかしそうした試みを進める中で、写真のスタイルに統一感がない、あるいは河文のブランドイメージがまだ確立していないなどといった様々な問題にぶつかり、この大きな計画はやむを得ず一旦お預けとなり、現在は自らが撮影した写真を使用して商品を棚に並べています。また、プラットフォームの立ち上げ初期には自身が注文の流れに詳しくなかったことから、システムが顧客の注文を迷惑メールと誤認して受注漏れとなり、お客様に半月も無駄に待たせてしまったということもありました。深く責任を感じた劉さんはこのことを重く受け止め、それ以降はよりいっそう注意深く1件1件の注文をしっかりと確認するようになったのです。

 劉さんいわく、以前はせっかちで全てのことをとにかく早く完成させたいと思っていたけれど、今は適度に急ぐことができるようになり、「一定のペースを守って進み、急がない」ことの大切さを学んだということです。

また、これまでの運営の過程を振り返り、初めの頃は「メジャー」になり「マス市場」に参入したいと必死だったと言います。ですがこうした考えが彼自身を縛り付け、いくら頑張っても達成できないという感覚に苦しみ続けました。そして後にECプラットフォームの運営を開始したところ、視野がどんどん広がっていき、現段階での原住民カルチャークリエイティブ産業はおそらくまだ「ニッチ市場」にさえなっていないということに気付き始めたのです。劉さんはユーモアを交えながら、自分たちはたぶんまだ「ミクロ市場」程度だと語りました。

「将来的には『ポップアップストア』をやりたいと考えていますが、今の段階ではまずサイトトラフィックを増やすことを目標に、マーケティングを行っています」これまではオンライン広告を全く利用したことのなかった劉さんですが、最近はGoogleのプロフェッショナル認定証クラスを受講して自身のオンラインマーケティングの知識を充実させようと計画中だとのことです。また、今後は原住民集落の工房と協力して河文と原住民集落の業者たちとのコラボによる「オリジナル商品」を開発する計画にも着手しており、実質的な「プラットフォームの独自性」の確立を目指しています。

「どの原住民集落の手工芸品も皆同じだと思っている人が大勢います。だから私は原住民手工芸品の全く違う新しいスタイルを表現したいと考えているのです」もっと多くの非原住民族の人々に原住民集落の素晴らしさを知ってもらおうと、河文さんは彫刻から織物、機械刺繍からトンボ玉に至るまで各種様々な原住民カルチャークリエイティブ商品を取り揃えており、店内はまるで現代原住民カルチャークリエイティブ製品のエキシビジョンホールのよう。「原住民集落の素晴らしさを共に享受する」というコアバリューを完全に具現化しており、伝統的技芸と前衛的なカルチャークリエイティブがスムーズに行き来するパイプラインのような存在となっています。

そもそも起業するということ自体が容易ではないのですが、さらにカルチャークリエイティブブランドから販売代行プラットフォームに転向し、実店舗をオープンしてオンラインショップも開設するといった前進を続けていくことは、全てが新たな冒険であると言えます。劉大衛さんは原住民集落文化をもっと世に広め盛んにしていきたいという使命感を抱きつつ、「原住民集落で共有する販売プラットフォーム」を確立することを最終的な目標に据えて、大胆かつ慎重に責任感を持って前進し続けています。

 

お問い合わせ先

劉大衛

部族:タイヤル族

電話:0930-330-360

ブランド名:河文原住民族生活工場(Hbun)

原住民族委員会プロジェクトへの参加歴:2016年第二回台湾原住民族リーンスタートアップ指導プロジェクト、2017年Ayoi阿優依-東京インターナショナルギフトショー、2019年Ayoi阿優依-東京インターナショナルギフトショー、2020年イノベーションリサーチ指導プロジェクト。